華厳経 第五会二部
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華厳経

第五 兜率天宮会 二部

  

第二十一章 十回向品

 この章は、第五会の本論である。回向とは、さし向けるという意味で、十種の大行を、衆生と、無上のさとりと、仏とに、回向することを説いている。[十回向

 金剛幢菩薩は、仏の神通力をうけて、明智三昧に入った。三昧に入りおわって、十方世界の、無数の仏国土における無数の諸仏を見たてまつった。この無数の諸仏は、ことごとく、金剛幢と名づけられている。
 そのとき、諸仏は、金剛幢菩薩に、つぎのように、のたもう。
「なんと素晴らしいことであろう。仏子よ、あなたは、よく明智三昧に入ることができた。
 あなたが、三昧に入ることができたのは、十方世界の無数の諸仏が、あなたに、神通力をあたえたもうがゆえである。
 また、ヴィルシャナ仏の本願力のゆえである。また、あなたをして、清浄な、さわりのない智慧の境地に、入らしめようとおもうためである。
 また、あなたをして、無量の仏法は、および、十種の回向の行を、説かしめようとおもうためである。
 また、あなたをして、大いなる願いを開発せしめ、すべての菩薩をよろこばせ、すべての諸仏と同じ功徳を、身につけさせようとおもうためである。
 仏子よ、あなたは、仏の神通力をうけて、まさに、この法を説くべきである。
 それによって、あなたは、仏の家に安住し、世間を超出するもろもろの功徳をやしない、あまねく、法界をてらし、さわりのない仏法の光明のなかに、安住することができるであろう。」
 そのとき、諸仏は、金剛幢菩薩に、無量の智慧をあたえ、さわりのない仏法の光明をあたえ、一切の如来とひとしい身をあたえ、もろもろの菩薩の、不思議な、三昧の方法をさずけ、すべての場所で、説法して絶えることのない弁舌をあたえたもうた。それは、かの明智三昧の功徳の力によるためである。

 そのとき、諸仏は、おのおの、右の手をさしのべて、金剛幢菩薩のあたまを、なでたもうた。すると、この菩薩は、三昧から立ち上って、もろもろの菩薩に、告げていうよう、
「仏子よ、この菩薩の不思議な大願は、あまねく、一切の衆生を、すくいまもろうとするものである。
 菩薩は、この願いを立てて、三世諸仏の回向をまなんでいる。
 仏子よ、菩薩の回向とはなにか。
 菩薩の回向には、十種ある。過去、未来、現在の諸仏は、ことごとく、この回向を説いておられる。
 その十種とは、なにか。  一には、【一切の衆生を、すくいまもり、衆生のすがたをはなれた回向】、二には、【こわれることのない回向】、三には、【一切の諸仏に等しい回向】、四には、【一切の場所に至る回向】、五には、【尽きることのない功徳の蔵の回向】、六には、【平等にしたがう功徳の回向】、七には、【等しく一切の衆生を観察する回向】、八には、【如相の回向】、九には、【束縛も執著もない解脱の回向】、十には、【法界無量の回向】である。
 仏子よ、この、菩薩の十種の回向は、三世諸仏が、ともどもに説きたもうところである。

@ 【救護一切衆生離衆生相迴向
 仏子よ、第一に、『一切の衆生をすくいまもり、衆生のすがたを離れた回向』とは、なにか。
 この菩薩は、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の、六波羅蜜を修行して、つぎのようにおもう、
『わたしの行ずるところの善は、一切の衆生のためになり、衆生をして、ついには清浄ならしめるであろう。
 この行ずるところの善をもって、一切の衆生を、地獄、餓鬼、畜生などの、無量の苦悩から救おう。』と。
 また、つぎのようにおもう。
『わたしは、この善を回向して、一切衆生のために、みずから、家となろう。それは、衆生の苦悩を滅するためである。
 みずから一切衆生のために、まもりとなろう。それは衆生をして煩悩を脱せしめるためである。
 みずから一切衆生のために、帰処となろう。それは、衆生をして恐怖を離れしめるためである。
[ここに「爲一切衆生作趣。令至一切智地故。」が抜けている。私訳:みずから一切衆生のために趣(生存の状態、もしくは赴くところか?情報求む)となろう。それは、衆生をして一切智に至らしめるためである。]
 みずから一切衆生のために、安穏となろう。それは、衆生をして究極の安らかな場所を得しめるためである。
 みずから一切衆生のために、大いなる光明となろう。それは、衆生をして、無智を滅し、智慧の光を得しめるためである。
[「爲一切衆生作炬。令滅無明闇故。」が略。上の一文とほぼ同じ意味なので私訳を省く]
 みずから一切衆生のために、ともしびとなろう。それは、衆生をして、究極の光明に、安住せしめるためである。 [「爲一切衆生作導。令入方便法故。」が略。私訳:みずから一切衆生のために導(道標?情報求む)となろう。それは、衆生をして、方便法に入らしめるためである。]
[「爲一切衆生作主寶臣。令得無礙淨智身故。」が略。私訳:みずから一切衆生のために主法臣(拠り所としての菩薩)となろう。それは、無碍なる清らかな智を備えた身を得しめるためである。]』と。
 仏子よ、菩薩は、このような、無量の善を回向し、一切の智慧を完成せしめるであろう。
 仏子よ、菩薩は、親しいもののためにも、怨みのあるもののためにも、もろもろの善をさしむけ、決して区別することをしない。
 なぜかというと、菩薩は、一切を平等視して、うらみも親しみも超えているから、つねに、慈愛の眼で、もろもろの衆生を見ているからである。
 もし衆生が、悪事をいだいて、菩薩にむかって反逆の心をおこすならば、菩薩は、その衆生のために、良き師[善知識]となって、もろもろのすぐれた真理を説きあかすであろう。たとえば、いかなる毒物も、大海を毒することができないように、衆生のいかなる罪悪も、菩薩の道心を乱すことはできないであろう。
[「菩薩亦復如是。一切童蒙愚癡無智不知報恩。瞋恚貢高破戒生盲。如是等類無量過惡。不能動亂菩薩道心。譬如日天子出普照天下。不以盲人故隱而不現。又復不以乾闥婆城四域塵?。阿脩羅障閻浮樹蔭及餘山障。如是等類無量障蔽故。隱而不現。菩薩摩訶薩亦復如是。常正憶念未曾散亂。深廣安諦心無憂?。正意思惟。悉欲究竟功徳智慧。清淨法光普照世間。示眞實義。淨修一切諸法智門。爲諸衆生常修善根。一切衆生有無量惡。菩薩摩訶薩。不以惡衆生故嫌恨退沒不行迴向。不以難調伏衆生故退捨善根不行迴向。雖有衆生邪見瞋濁。於大莊嚴其心不轉。不捨大願救護衆生。若見衆生濁惡無信不知報恩。修習菩提未曾懈廢。若與愚癡童蒙共事。心無憂惱。何以故。我以明淨圓滿慧日。出於世間。清淨調伏一切衆生。」が略。私訳は後日付加する。]

 菩薩が、菩提心をおこして、もろもろの善を回向するのは、ひとりの衆生のためでもなく一つの仏国土をきよめるためでもなく一仏を信ずるためでもなく一仏の法をきくためでもない
 菩薩は、まさに、一切の衆生をすくいまもるために、もろもろの善を回向するのである。一切の仏国土をきよめ、一切の仏を信じ、一切の諸仏をうやまい、供養し、一切の仏の説きたもう正法をきくために、もろもろの善を、無常の[無上の。漢訳では阿耨多羅三藐三菩提で最高の悟りの意味]さとりにむかって、回向するのである。
 菩薩は、つぎのようにおもう。
菩提心のたからをほりおこすのは、如来の力である。菩提心は、諸仏とひとしく、広大にして平等である。いかにながいあいだ、修行し、学んでも、得ることはむずかしい。』と。
[「菩薩摩訶薩。如是觀諸善根。信心清淨。長養大悲。以諸善根。普爲衆生深心迴向。非但口言。於諸衆生發歡喜心。明淨心。柔軟心。慈心。愛念心。攝取心。饒益心。安樂心。最勝心。以諸善根迴向。菩薩摩訶薩。以諸善根迴向時。作如是念。若我所有迴向功徳。令一切衆生。得清淨趣。得清淨生。功徳滿足。一切世間無能壞者。不可窮盡。常得尊重心不錯謬。分別了知一切諸趣。思量諸佛。具足莊嚴身口意業。具足莊嚴一切功徳。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、また、つぎのようにおもう。
『この回向の功徳によって、一切の衆生をして、つねに諸仏を見たてまつらしめ、諸仏[漢訳では「彼仏=かの仏」]のみもとにおいて、こわれることのない信心を得させ、正法をきかしめ、教えのとおりに修行せしめ、[「於如來所得柔軟心淨身口業。心常安住勝妙善根。永離貧法七財滿足。修學一切諸佛所學。得諸善根。」が略。私訳は後日。]智慧[すべての智]と解脱を完成せしめ、一切の衆生に対して、慈愛の眼を向けさせ、[「其身清淨相好莊嚴。言論辯慧功徳具足。調伏諸根成就十力。發起諸善。心住滿足。無所染著。令一切衆生具佛快樂。」が略。私訳は後日。]ついには、仏の住所に安住せしめよう。』と。
 菩薩は、また、つぎのようにおもう。
『一切の衆生は、はかり知れない悪業をかさねている。この宿業のために、はかり知れない苦をうけ、如来を見たてまつることができず、また、正法(しょうぼう)をきくことができない[「不識淨僧。此諸衆生。具有無量大惡罪業。應受無量無邊楚毒。」が略。私訳は後日。]。
 わたしは、地獄、餓鬼、畜生の三悪道のなかにおいて、衆生の代りに苦をうけ、衆生をして、解脱を得しめよう。
 たといわたしが、そのために、はかり知れない苦悩をうけても、苦悩のゆえに、わたしの心が退いたり、おそれたり、怠ったりして、衆生を捨てさることがないようにしよう。[「何以故。我爲衆生荷負重擔。滿平等願。度脱一切生老病死愁憂苦惱無量諸難。流轉生死一切邪見。失諸善法愚癡無智。我當悉度免此衆苦。衆生常爲愛網所纒。無明覆蔽染著有愛。爲之走使不得自在。縛在苦獄隨諸魔業。於諸佛所心生疑惑。 不得出世道。不見安隱處。常馳無量生死曠野。受無量苦。菩薩摩訶薩。見彼衆生沒生死泥受衆楚毒。起大悲心。饒益衆生令得善利。免度苦難。善根迴向。以大迴向迴向。如三世菩薩迴向。如諸佛所説大迴向經迴向。令一切衆生悉得清淨。具足善根究竟一切智。」が略。私訳は後日。]』と。
 菩薩は、また、つぎのようにおもう。
『わたしは、一切の衆生をして、仏の安らかな住所に安住せしめよう。それは、決して、自分がさとりに達するためではない。ただ、衆生をして、迷いの世界を出て、智慧のこころを得しめようと願うだけである。[「拔出衆生惡道嶮谷。救無量苦度生死流。」が略。私訳は後日。]』と。

[「復作是念。我當爲一切衆生受無量苦。令諸衆生悉得免出生死沃焦。我當爲一切衆生。於一切刹一切地獄中。受一切苦。終不捨離。我當於一一惡道盡未來劫。代諸衆生受無量苦。何以故。我寧獨受諸苦。不令衆生受諸楚毒。當以我身免贖一切惡道衆生。令得解脱。菩薩摩訶薩。復作是念。我悉當爲一切衆生。作誠實語者。離惱害心不捨衆生。何以故。我因衆生發菩提心。度脱一切。不求尊貴。不求五欲。不求世間種種樂故。行菩薩道。何以故。五欲是世間法。諸魔境界。愚人所行諸佛訶責。彼能出生一切苦惱地獄餓鬼畜生閻羅王處。忿恚鬪諍更相訟説。皆由五欲。積習五欲遠離諸佛。能障生天況無上道。菩薩明見五欲有如是等無量過患。是故不以五欲修菩薩行。但欲饒益安隱衆生。發菩提心求無上道。令一切衆生得一切利具諸大願。斷絶衆生煩惱鉤餌。離無量苦。菩薩摩訶薩。復作是念。我當以諸善根迴向。令一切衆生得種種樂。究竟樂。饒益樂。不共樂。寂靜樂。無染樂。無動樂。無量樂。不死不轉樂。不滅樂。一切智樂。我當爲一切衆生作調御師。作主藏臣。作大明炬示安隱趣。令離諸難解一切法。我當令解諸甚深義。我當爲作一切智船度生死海。我當令知無量善根迴向。我當悉爲示現彼岸。菩薩摩訶薩。以是無量善根迴向。救護一切度生死海。令諸如來皆悉歡喜得一切智。捨離衆魔遠惡知識。親近菩薩勝善知識。成就淨業盡滅衆惡。具足菩薩無量願行一切善根。菩薩摩訶薩。以諸善根正迴向已。作如是念。不以四天下一一衆生故一一日出。但一日出世。悉能普照一切天下。又諸衆生。不以自身光明知有晝夜。遊行觀察興造諸業。皆由日天子出普照天下。一切衆生無業不就。菩薩摩訶薩亦復如是。修諸善根迴向。普爲衆生作如是念。彼諸衆生無智慧光。尚不自照何況照他。唯我一人志獨無侶。修諸善根迴向。欲爲度脱一切衆生。普照一切衆生。分別一切衆生。了達一切衆生。令一切衆生入甚深法。攝取一切衆生。成就一切衆生。悦樂一切衆生。柔軟一切衆生。滅除一切衆生疑惑。菩薩摩訶薩。復作是念。我當修學如日天子普照一切不求恩報。不爲惡衆生故捨大莊嚴。亦不以一惡衆生故捨離一切而不度脱。但勤修習善根迴向。欲令衆生得一切樂。攝少善根迴向廣大。若諸善根不能饒益衆生者。我終不以善根迴向。以諸善根悉與衆生發心迴向。令一切衆生不著諸法故迴向。以衆生性迴向而無所至。菩薩如是迴向。亦無所著不取所有性。安住諸善根。不取相迴向。業報虚妄無所有。亦無所著。不取五陰相迴向。不壞五陰相迴向。不取虚妄業迴向。不求報。不起虚妄因縁。不生不起不住。不住堅固相。不住虚妄法。不取衆生相。不分別世界。不住心顛倒想顛倒見顛倒。不著語言道。但欲令衆生解眞實法迴向。觀察一切衆生平等迴向。法界印印諸善根迴向。離欲等法觀察善根迴向。解一切法。離於顛倒。得諸善根。以無二法觀察法界迴向。彼迴向不生諸法。不滅諸法。以如是等善根迴向。修行清淨諸對治法迴向。觀一切善根。皆悉迴向出世間法。於彼善根不作二相。薩婆若非即是業。亦不離業迴向。觀察薩婆若。不即是業。亦不離業。得薩婆若。願智業照明清淨故。報亦照明清淨。報照明清淨故。薩婆若亦照明清淨。捨離一切動亂覺觀?慢放逸。隨方便智。以諸善根迴向。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、このように回向して、執著するところがない。衆生や世界のすがたにも執著せず、ことばにも執著しない。
 菩薩は、ただ、衆生をして真実の法をさとらしめようとおもって回向し、一切の衆生は、平等であると心得て回向し、我欲をはなれ、もろもろの善を観察して回向する。
 菩薩は、このような善の回向によって、永久に、一切の悪事をはなれ、仏のほめたたえたもうところのものとなる。
 仏子よ、これが、『一切の衆生をすくいまもり、衆生のすがたを離れた回向』である。

[「爾時金剛幢菩薩。承佛神力。普觀十方及一切衆。觀察法界入深句義味。大悲普覆一切衆生。護持三世佛種不斷。入一切佛諸功徳藏。出生諸佛清淨法身。善能分別諸衆生心。過去所種一切善根。知時不失。具足法身。善能示現清淨色身。以偈頌曰
不思議劫所修行 常爲饒益諸群生
精進堅強意無礙 常求諸佛妙功徳
其心清淨離瞋恚 恭敬供養調御師
深解諸法救衆生 彼能善入迴向藏
勇猛精進力具足 智力照明甚清淨
忍心堅固不傾動 常能救護諸群生
於無等所心安住 踊悦歡喜意清淨
菩薩忍力如大地 悉能饒益諸衆生
不以苦行自求樂 大慈悲起無量行
常能救護諸群生 彼人速入無礙地
十方一切諸世界 其中衆生皆攝取
常爲衆生心安住 修學無量諸迴向
以歡喜心行布施 具足護持清淨戒
勇猛精進心堅固 清淨智慧善迴向
其心廣大不可量 忍力堅強常迴向
淨修一切諸禪定 智慧深妙難思議
十方一切世界中 具足修習清淨行
智慧迴向諸功徳 以一切樂益衆生
彼人積集衆善業 無量無邊不可數
欲令衆生具修習 住不思議深妙智
普爲一切衆生故 不思議劫住地獄
菩薩心常無懈怠 決定功徳常迴向
不求色聲諸香味 亦不希望一切觸
常求無上最勝智 度脱一切諸群生
菩薩智淨如虚空 普行無量大士行
最勝所行淨業道 無量名稱常修行
菩薩遊行諸世界 常能安隱群生類
悉令一切皆歡喜 修菩薩行無厭足
除滅一切心垢穢 思惟修習無上智
不自爲己求安樂 常欲利益諸群生
菩薩迴向到彼岸 除滅無量心穢毒
具足修習三世佛 無量清淨諸功徳
菩薩未曾染著色 受想行識亦如是
不住一切諸三界 所有功徳悉迴向
諸佛所知衆生類 皆悉攝取無有餘
究竟度脱諸群萠 是名菩薩殊勝行
菩薩一切心安住 開悟彌廣不可稱
離癡正念伏諸根 身口意業常寂然
一切内外所有法 皆悉虚妄無眞實
如風行空無所礙 菩薩心行亦如是
所起身業常清淨 能令諸佛悉歡喜
於最勝所言不虚 意常專向諸如來
十方無量諸世界 所有最勝悉往詣
於彼睹見大悲尊 悉能恭敬供養之
心常遠離一切惡 處大衆中無所畏
心常安住如來道 彼爲三有清涼池
善修分析一切法 具足了達諸有無
善能趣向眞法性 深入無諍勝三昧
修習菩薩堅固行 一切衆生莫能壞
明學了達甚深義 於三世法無所著
究竟迴向到彼岸 普令衆生悉清淨
遠離一切諸染著 菩薩所行無所倚
一切衆生語言法 於彼智慧無障礙
談論巧妙無愛著 心常安處無礙住
菩薩如是行迴向 無量善心功徳藏
能令十方諸世界 一切如來皆歡喜」が略。私訳は後日。]

A 【不壞迴向
 仏子よ、第二に、『こわれることのない回向』とは、なにか。
 この菩薩は、過去、未来、現在の諸仏のみもとにおいて、こわれることのない信を得て、一切の諸仏は、ことごとくよろこんでおわれる。
[「於諸菩薩所。乃至初發一念求菩薩善根及一切智。於彼菩薩得不壞信。悉於一切諸佛法中。一向直心而不可壞。於諸佛教得不壞信。守護一切諸如來法得不壞信。常以愛眼等觀一切。以善根迴向。令彼衆生獲諸善利得不壞信。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、清浄の善において、こわれることのない信を得ている。なぜなら、もろもろの善を実践しているがためである。
 菩薩は、すべての回向において、こわれることのない信を得ている。なぜなら、ひたすら解脱を得て、満足しているからである。
[「於一切菩薩諸法師所得不壞信。具足起如來想故。」が略。私訳は後日。]
 菩薩は、如来の自在な神通力において、こわれることのない信を得ている。なぜなら、あきらかに、諸仏の不思議なるを信じているからである。
[「於一切菩薩方便得不壞信。攝取種種無量無數行境界故。」が略。私訳は後日。]
 仏子よ、菩薩は、このように、こわれることのない信に安住し、仏や菩薩や一切衆生などの、はかり知れない多くの世界において、もろもろの善を実践し、菩提心をやしない[=種諸善根。分別諸善根。長養菩提心。]、慈悲心をそだて[=修習大慈所生善根。廣修大悲平等觀察。=私訳:大慈を実践して善根を生じ、大悲を広く修めて平等に観察する]、諸仏にしたがって、すべての清浄な善をおさめとり、[ここに「深入實義。集功徳藏。行大惠施。修諸功徳。」が略。私訳:深く実義に入り功徳の蔵を集め、大いなる恵みと施しを行事、諸々の功徳を修め、]過去、未来、現在の三世を、ひとしく観察している。
 菩薩は、このようなもろもろの善を、智慧に回向して、つねに諸仏を見たてまつり、よき師にしたしみ、はかり知れない無数の菩薩たちと会合し、[「念薩婆若心無散亂。受諸佛教興護法心。」が略。私訳は後日。]一切の衆生を、おしえ、みちびく。

[「心常不離出世迴向。供養守護一切法師。解了諸法。修習滿足一切大願。菩薩摩訶薩。如是精勤修習無量善根。積集長養善根。正念思惟觀察境界眞實等義。恭敬供養。威儀具足。善根迴向。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、もろもろの善を回向しおわり、このような善の回向がもたらすところの力によって、菩薩の行をおさめるとき、一念一念のなかにおいて、一切の諸仏を見たてまつり、その諸仏を、ことごとくよろこばせ、はかり知れないほどの、無数の、宝、はな、香、かずら、ころも、のぼり、種々の座所、種々の宮殿、種々の樹々などをもって、はかり知れないほどのながいあいだ、ただ、ひたすらに、一切の如来を供養したてまつる。[この部分一帯は大幅に省略されているが、漢訳の内容自体がおびただしい無駄であるため、これについての私訳の記述は省く。]

[「此諸最勝般涅槃後。供養舍利。欲令一切衆生皆悉歡喜。攝取一切衆生善根。令一切衆生離無量苦發菩提心。令一切衆生以大莊嚴而自莊嚴。無量莊嚴超出一切衆生境界示現佛法難可値遇。滿足阿僧祇諸如來力。清淨信心供養導師。受持守護一切佛法。如是供養現在諸佛。及涅槃後供養舍利。於無量阿僧祇劫。説供養具不可窮盡。諸佛成就無量功徳。教化度脱一切衆生。我常供養彼諸如來。」が略。私訳は後日。]

 菩薩のこころは、しりぞくこともなく、休みもなく、しばらくも、怠ったことがない。
 菩薩は、うれいもなやみも、いだかず、すべての執著をはなれ、仏の住したもうところに、安住している。
[=不懷憂惱亦無所著無有心想。於諸法中而無所染無所依止。不昧善根離一切著。以實法印印業法門。生一切法。住佛所住。]
 菩薩は、いろもなく形もない真理そのものの世界を観察し、その菩提心は、真理そのものによっておこり、いかなる存在にも執著せずに回向し、はじめて菩提心をおこしたときより、もろもろの、すぐれた善を実践して、ことごとく回向する。
[=觀無生性。境界法印印彼發心。受持如來清淨迴向。觀察平等法性迴向。入無行方便出生諸行心捨一切迴向。無量方便迴向。離一切有迴向。安住離相方便修習法門善根迴向。菩薩從初發心修習一切諸妙善根皆悉迴向。]
 菩薩の実践した善は、たとい生死(しょうじ)のなかにおいても、こわれることはない。
[=以此善根於生死中而不可壞。]
 菩薩は、真実の智慧をもとめて、しりぞかず、いかなる環境においても、こころ乱れず、一切の衆生を、めざましめようと努力し、生死に執著することがない。

[「得無礙智門。修菩薩行。而彼善根不可窮盡。世間諸法所不能壞具足清淨諸波羅蜜。究竟一切智力。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、このように、無智のやみをはなれて、菩提心を成就し、[「普照一切長白淨法。善根迴向具足衆行。」が略。私訳:あまねく浄らかな一切を照らして、善を回向しあらゆる行を成就して →「長白」が不確か、情報求む]清浄の心をもって、一切は平等であることを観察し、ふかく、諸法の真実に悟入する[この下線部はむしろ次の行の冒頭に移動すべき。次行参照]。
 [深く諸法(の真実)に入りて]業は、あたかもまぼろしのごとく、業報は、いなずまのごとく、因縁より生じた諸法は、ひびきのごとく、菩薩の行は、かげのごとくである、と知り、また、執著をはなれた智慧の眼のあらわれるところ、菩薩の活動は、はたらきながら、しかも少しもはたらかず、一切の諸法において無二である、とさとり、[「分別菩薩一切行相。不著諸相。善知方便入同事業。不捨一切白淨善法。離一切障無礙無著。常爲諸佛之所護念。遠離愚癡。如是菩薩摩訶薩。成就善根出生善法。不壞業報明見眞實。善解迴向。以方便力。出生業報。」が略。私訳は後日。]かくして菩薩は、ありのままの真実に到達する[=究竟法性。得到彼岸。了達諸法。]。

[「迴向大智。諸業善根。其心清淨行無所行。菩薩摩訶薩。如是善根迴向。欲度脱一切衆生佛種不斷。滅諸惡業業報。迴向一切衆生。得無量智成一切智。離世境界滅諸煩惱。究竟清淨成就智慧。入深方便捨生死苦。成就諸佛無量善根。摧伏魔業。得平等法印以印諸業。隨順薩婆若無上菩提。」が略。私訳は後日。]
 菩薩は、このように、もろもろの善を回向して、あまねく一切の世界を照らし、一切の智慧を成就している[=具足成就薩婆若乘。「薩婆若(さつばにゃ、真言ではさはんにゃ、天台ではさはにゃと読む)」は梵語sarva-jnyaの音写で一切智と訳す。何故ここに「乘」の字があるのかが不明。情報求む]。
 仏子よ、これが、『こわれることのない回向』である。
 菩薩が、この回向に安住すれば、無数の仏を見たてまつることができ、無数の清浄なる真理を得ることができ、一切の衆生において、平等のこころを持ち、無智のやみをはなれて、一切の諸法に悟入し、もろもろの如来の、自在な神通力を得て、あらゆる悪魔を克服し、さわりのない智慧を得て、みずから、こころの眼をひらく[=於一切法見眞實義。於一切佛刹悉能受持分別其相。=私訳:一切法において真実の意味を見、一切の仏国において悉く実相の理解を受持する]。
 菩薩は、『こわれることのない回向』の力をもって、ありとあらゆる善をおさめとっている。

[「爾時金剛幢菩薩。承佛神力普觀十方。
乃至以偈頌曰
修習無量無數業 所乘堅固不可壞
能令諸佛悉歡喜 是名智者所迴向
所供養佛難思議 布施持戒伏諸根
彼爲一切修迴向 清淨無量衆生故
一切上妙諸華香 無量無數衆寶衣
種種莊嚴及寶蓋 供養一切諸如來
如是無量諸供具 不可思議曠劫中
恭敬供養調御師 心常歡喜無厭足
專心觀察諸最勝 一切世間大明燈
現在十方一切佛 皆悉睹見如目前
不可思議無量劫 修行布施無厭足
不可思議無量劫 修諸善根亦無厭
善分別知諸心想 如實觀察無虚妄
悉知諸根無有餘 常能饒益一切衆
心大歡喜無有量 信心清淨而恭敬
不思議劫忍住世 饒益救度一切衆
一切諸佛滅度已 供養舍利無厭足
悉以無量妙雜寶 建立恒沙諸塔廟
造作無數尊形像 寶藏淨金而莊嚴
巍巍高大如山王 其數無量不思議
修學積集諸功徳 勝妙堅固不可壞
菩薩善知行迴向 分別非有亦非無
若能如是修迴向 功徳無量不可盡
勝妙智慧觀諸法 皆能了達無所生
方便修習令心淨 悉與一切如來等
以不可盡諸方便 迴向無盡如來藏
發起無上菩提心 一切世間無所依
普至十方諸世界 於一切衆心無礙
方便啓導衆生心 悉令出生佛菩提
觀察衆生心平等 推求眞實不可得
一切諸法悉無餘 了達其性無所有
迴向無著清淨眼 永離一切世間苦
欲令諸有悉清淨 心不妄取諸法相
分別所有無所有 能令心淨大歡喜
於一佛刹無所著 了諸佛土無堅固
不取一切有爲法 亦不染著法自性
方便迴向薩婆若 無上智慧自莊嚴
普令諸佛悉歡喜 是爲菩薩迴向業
菩薩一心念諸佛 無上智慧巧方便
如諸如來無所著 令我悉獲此功徳
常欲救護一切衆 遠離無量諸惡業
常行饒益衆生心 於饒益心無虚妄
隨所住地守護法 示現涅槃實不滅
一切如來無二法 願我迴向亦如是
一切世界諸趣中 於有爲法無所著
菩薩不縁語言道 亦不染著無語言
十方一切諸如來 悉攝諸法無有餘
離一切趣而受生 於所離生無虚妄
以一莊嚴一切嚴 亦不分別此諸法
了達世間悉虚妄 一切所行無所有」が略。私訳は後日。]

B 【等一切佛迴向
 仏子よ、第三に、『一切の諸仏に等しい回向』とは、なにか。
 この菩薩は、過去、未来、現在の、諸仏の回向をまなぶ。
 菩薩が、菩薩の行をおさめるとき、そのこころは、清浄にして、愛も憎しみもなく、[「歡喜悦樂起無壞心。」が略。私訳:無壊心(壊れぬさとりの心か?)の生起を悦楽歓喜し]もろもろの、うれいやなやみをはなれて、正直のこころを得、からだも気立ても、やわらかに、きよらかとなる。
 菩薩が、このようなよろこびを得るときに、諸仏に回向して、つぎのようにおもう。
『一切の諸仏は、この上もない、きよらかなたのしみを、もちたもうけれども、さらに、つぎのことをお願いしよう。すなわち、諸仏は、不思議な仏のたのしみをそなえ、はかり知れない仏の三昧のたのしみをおさめ、はかり知れない大慈悲[漢訳では「大悲」のみ]のたのしみを成就し、不思議な仏の解脱のたのしみをなしとげ、[「具足攝取諸佛神足自在快樂。」が略。私訳:諸仏の神足の自在なることの楽しみをおさめ]さらに、諸仏のはかり知れない力のたのしみ、永久に一切の念層をはなれるたのしみ、しずまりの極致にいたって、決して変わることのないたのしみ、乱れることもなく、こわれることもない行のたのしみを、そなえていただくように。』と。
 菩薩は、このように、もろもろの善を、諸仏に回向しおわり、さらにまた、一切の菩薩たちに回向して、つぎのようにおもう。
『願わくは、まだ満足していないものは、ことごとく満足させ、まだ心をきよめていないものは、ことごとくきよめさせ、金剛のように堅固な菩提心に安住して[この下線部は間違い。「未滿諸波羅蜜者悉令滿足安住金剛菩提之心。」は本来「もろもろの修行を完成していない者をして金剛のような菩提心に安住させて」。]、一切の智慧において、しりぞくことのないようにさせ、[「不捨大莊嚴。守護菩提門及諸善根。」が略。私訳:福徳と智慧とによる美しさを捨てさせず、悟りおよびもろもろの善を護らせ]怠惰なこころをはなれて、菩提心をおこさせ、それぞれの願いを満足させ[「安住一切菩薩所住。得諸菩薩明利諸根。修習善根。證薩婆若。」が略。私訳:一切の菩薩のあるべき姿に安住させ、諸菩薩の優れた信・精進・念・定・慧を得、善を行わせ、智慧の完成を証明させ]よう。』と。
 このように、菩薩は、もろもろの善を、一切の衆生に回向する。
 菩薩は、一切の衆生をして、仏を見、法をきき、僧に近づかしめようと回向する。すなわち、ひたすら、仏を念ぜしめようと回向し、きよらかにして、すぐれた法を念ぜしめようと回向し、僧をうやまい、尊ばしめようと回向する。
 また、菩薩は一切の衆生をして、仏を見たてまつって遠ざからしめないように回向し、もろもろのきよらかな心を完成するように回向し、[「分別諸如來法迴向。成就無量功徳迴向。清淨諸通善根迴向。」が略。私訳:あらゆる仏法を理解させるよう回向し、無量の功徳を成就できるよう回向し、諸々の善を清浄たらしめんと回向し(ここの「通」の意味不明。情報求む)]すべての疑いやまどいを除くように回向する。
 菩薩は、一切の衆生をして、ことごとく、無上のさとりを開こうとする心をおこさせ、その心を、やしないそだて、ただひたすらに、一切の智慧をもとめさせ[「捨離誹謗諸佛正法。常樂具足一切智地。」が略。私訳:正しい仏法を誹謗するのをやめさせ、常に一切智を楽しませ]る。[「令一切衆生。究竟清淨得一切智。菩薩摩訶薩所行善根。以諸大願。攝取行等行。積聚等積聚。長養等長養。皆悉廣大具足充滿。」が略。私訳:一切衆生をして一切智を得させしめる。菩薩の行なう善は、もろもろの大願をもって、行をおさめとり、積み重ね、そだてあげることですべてことごとく広大に充満する。]
 菩薩は、家においては、妻子とともにいるけれども、しばらくも、さとりへの心をはなれず、一切の智慧の境界を心におもいうかべ、みずから、さとりに向い、他の人々をも、そこへいざなう。
 菩薩は、すなおな、平等の心をもち、いろいろなすがたで、妻子一族のまえにあらわれ、方便の智慧によって、ことごとく、究極の解脱を完成せしめ、ともに同居しているけれども、心に執著するところがない。  また、菩薩は、大悲の心によって、在家のなかで、ふるまい、大慈の心によって、妻子にしたがっていても、菩薩のきよらかな道においては、なんのさまたげるところもない
 このように、菩薩が家にあるときは、一切の智慧の心をもって、もろもろの善を回向する。
 たとえば、菩薩は、着物をつけ、飲食をなし、また、歩くときも、とどまるときも、坐るときも、ねむるときも、こころをきよめ、身のふるまいやことばに気をつけて決して散乱することがない。菩薩は、このような生き方によって、もろもろの善を無上のさとりを一切衆生に回向する。

[「饒益安樂一切衆生。無量諸願皆悉成就。攝取無量廣大善根。修習善根救護一切。 除滅一切放逸?慢。一心正念一切種智。欲覺一切諸佛菩提。捨離煩惱及順煩惱法修習一切菩薩所學。於一切智道無所障礙。樂修智地及諸善根。常樂愛語増長善根。令一切衆生永離苦惱不著所行。一心受持諸佛教法。是爲菩薩摩訶薩處在家屬攝取善根一心迴向無上菩提。
菩薩摩訶薩。復作是念。乃至小犬及餘畜生。當令此等具足修習不放逸行。離畜生趣得饒益樂。究竟解脱永度苦海。苦受。苦陰。苦覺。増上大苦。苦行。苦藏。苦根。苦舍。如是等無量無邊一切衆苦。菩薩摩訶薩。欲令衆生悉得除滅。以淨善根迴向無上菩提。教一切衆生迴向如是境界。正念思惟彼彼善根以爲上首。所謂迴向一切種智。發菩提心。攝菩提心。遠離生死。修習善根。出生死淵。得諸如來無礙快樂。修如來慈充滿十方。大悲饒益一切衆生。普令一切得清淨樂。守護一切諸勝善根。令一切衆生究竟佛法。遠離一切諸魔境界。入彼甚深如來境界。普能拔出一切世間。具足一切如來善根。住三世佛平等法中。如是菩薩摩訶薩今集善根。已集善根。當集善根。皆悉迴向。」が略。私訳は後日。]

 菩薩は、つぎのようにおもう。
『過去の菩薩は、すべての諸仏をうやまい、供養し、衆生を解脱せしめ、もろもろの善を実行して、さとりへ回向し、しかも、執著するところがなかった。[「不依色。不著受。不顛倒想不作行。不取識。離六入。不住世法。樂出世法。知法如空。究竟得至非趣彼岸。」が略。私訳:]ありとあらゆるものは、不生不滅であって、どこにも帰着するところがなく、破壊されることもなく、真実の世界に安住していると体得[下線部原文=照解諸法不生不滅無眞實相無所染著。一切諸法無有虚妄。無所歸趣。無所破壞。安住實際。][「無有自性。離諸性故。於一念中解一切法。無性爲性。常樂習行普門善根。具足如來圓滿功徳顯現一切。」が略。私訳:]していた。
 このような過去の菩薩のように[=如彼過去一切如來善根迴向。]、わたしも、また、真理を求め、真理を体得し、ありとあらゆるものは、まぼろしのごとく、いなずまのごとく、水面にうつる月影のごとく、鏡のなかの影像のごとく、実体がなく空であると知ろう[下線部=因縁和合假持諸法。悉分別知從業因起。]。ただ、如来のみが、わたしの達すべき究極の世界である。』と。

[「菩薩摩訶薩。如是隨學過去諸佛所學迴向。未來現在。亦復如是。菩薩摩訶薩。學三世佛所學迴向諸善根已。作如是念。如彼諸佛所知菩薩迴向。我亦如是迴向。第一迴向。勝迴向。最勝迴向。上迴向。無上迴向。無等迴向。無等等迴向。無比迴向。無對迴向。尊迴向。妙迴向。平等迴向。正直迴向。大功徳迴向。大願迴向。明淨迴向。善迴向。清淨迴向。離惡迴向。不隨惡迴向。」が略。私訳:]

 菩薩は、このように、もろもろの善を回向して、ふるまいも、ことばも、こころも、清浄となり、安住すべきところに安住し、ありとあらゆるものは、空で、実体がないとさとり[漢訳には「入一切法空無自在。」とあるが、この「無自在」は「無自性」の誤り]、世間を超越する真理をまなび、こころに、少しも執著するところがない(→なく)[「分別了知無量諸業。成就巧方便迴向諸法心無所倚。」が略。私訳:量り知れないもろもろの業を知りつくしてたくみな方便を成就し、心によるところころなしとすべての物事に対し回向する]。
 これが、菩薩の『一切の諸仏に等しい回向』である。
[「菩薩安住此迴向已。深入一切諸如來業。
趣諸如來勝妙功徳。入深清淨智慧境界。
不離一切諸菩薩業。善能分別巧妙方便。
入深法界巧妙方便。次第成就菩薩善根。
入於一切諸如來性。
以巧方便分別了知無量無邊一切諸法。雖復示現世界中生。
於諸世界心無所著。佛子。是爲菩薩摩訶薩等諸佛迴向。
爾時金剛幢菩薩。承佛神力普觀十方。
以偈頌曰
彼諸菩薩摩訶薩 修過去佛迴向法
亦學未來現在世 無量導師之所行
一切種種微妙樂 諸佛如來所讚歎
成就明淨勝法眼 迴向一切諸導師
菩薩身根種種樂 眼耳鼻舌諸情根
種種上妙無量樂 迴向一切諸最勝
一切世間諸善根 及諸如來所成就
於彼悉攝無有餘 隨喜迴向益衆生
菩薩隨喜無有量 亦以迴向一切衆
人中師子所有樂 願令衆生悉具足
諸佛如來所知見 一切衆生清淨樂
欲令衆生皆悉得 世界燈明所受樂
菩薩所得種種樂 迴向諸佛爲衆生
欲令衆生常安隱 於彼迴向無所著
菩薩修此迴向時 興發無量大悲心
如佛所知迴向徳 令我具足悉成滿
如諸最勝所知見 一切智乘微妙樂
如我在世諸所行 一切菩薩無量樂
一切趣中衆快樂 柔軟調伏諸根樂
皆悉迴向爲衆生 普令成就無上智
身口意淨離諸惡 巧妙方便心平等
以此迴向群生類 悉令成就無上智
菩薩所修諸行業 積集無量淨功徳
隨順如來生佛家 寂然不亂正迴向
十方無量世界中 攝取一切衆生類
無量善根悉迴向 普令衆生得安樂
不爲己身自求樂 欲令一切悉安隱
遠離一切虚妄心 悉解諸法空無我
十方無量諸最勝 所見一切眞佛子
以諸功徳迴向彼 速令究竟無上道
一切世間衆生類 等心攝取無有餘
以我所行諸淨業 令彼衆生速成佛
無量無邊清淨願 無等最勝所演説
皆悉清淨離諸垢 普令佛子究竟滿
一切功徳盡迴向 悉令十方諸佛刹
種種淨妙而莊嚴 菩薩如是學迴向
心不稱量諸二法 了達覺悟法無二
諸法非二非不二 不作虚妄是佛子
一切世間所有想 究竟悉度無有餘
亦不壞想及非想 決定了知衆生想
彼諸菩薩身淨已 則意清淨無瑕穢
口業已淨無散亂 當知意淨無所著
一心正念過去佛 分別未來諸導師
現在十方天人尊 菩薩遍學彼佛教
三世無量諸最勝 慧心明達無障礙
所行無量求菩提 迴向饒益諸世間
彼勝妙慧廣大慧 四眞諦慧離倒慧
平等實慧清淨慧 無比慧等皆迴向」が略。私訳は後日。]

C 【至一切處迴向
 仏子よ、第四に、『一切の場所に至る回向』とは、なにか。
 この菩薩は、もろもろの善をまなぶとき、その善をつぎのように回向する。
『わたしは、この善の力を、一切の場所に、いたらしめよう。たとえば、ものの実相は、世間の上にも、衆生の上にも、過去、未来、現在の三世の上にも、いたらないところはないように、わたしの善の力もまた、すべての場所にいたり、あまねく、一切の諸仏のみもとにいたり、そして、諸仏を供養しよう。』と。
[「過去諸佛所願悉滿。未來諸佛具佛莊嚴。虚空法界等世界中現在諸佛。及無量大衆以爲莊嚴。皆悉供養猶如諸天。於一念中。悉能充滿無量無邊一切世界廣大功徳智慧無礙善根迴向故。菩薩摩訶薩。復作是念。以此善根虚空法界等一切世界。世界性種種業所起。十方不可説世界。不可説佛刹。種種世界諸佛境界。無分齊世界。轉[番*飛]覆世界。伏世界。轉世界。一切無餘世界中。現在諸佛顯現無量自在神力。彼有菩薩。解虚空法界等一切諸法。爲諸衆生。於一切世界中。現爲如來出興於世。示現至一切處智。無量無邊自在受生。法身遍至不壞法界。平等普入同佛身藏。不生不滅普應一切。善巧方便出現世間。從眞實法性起。堅固不轉無礙所持。諸佛無礙功徳所生。」が略。私訳は後日]
 菩薩は、諸仏のみもとにおいて、もろもろの善を実践し、その一切の力を、諸仏に回向する。ただ、一心に、乱れることなく、動ずることなく、執著をはなれ、寂静の心をもって、諸仏に回向する[=以一心。不亂心。不動心。尊重心。離瞋心。無住心。無著心。無衆生心。無諂害心。寂靜心迴向。]。
[復作是念。虚空法界等一切劫中去來今佛。相好具足而自莊嚴。以妙法界莊嚴。而自莊嚴。彼佛眷屬。充滿虚空法界等一切世界。隨時出世未曾失時。我以善根迴向。供養諸佛。以無量香蓋。無量香幢。無量香幡。無量香宮殿。無量香網。無量香像。無量香光。無量香焔。無量香雲。無量香座。無量香輪。無量香住處。無量香佛世界。無量香須彌山王。無量香海。無量香河。無量香樹。無量香衣。無量香蓮華。以如是等無量無數衆香莊嚴。以爲供養以無量華蓋。廣説如上。乃至無量無數衆華莊嚴。以爲供養。以無數鬘蓋乃至無數衆鬘莊嚴。以爲供養。以不可思議塗香蓋乃至不可思議塗香莊嚴。以爲供養。以不可稱末香蓋乃至不可稱末香莊嚴。以爲供養。以無分齊妙衣蓋乃至無分齊妙衣莊嚴。以爲供養。以無邊寶蓋乃至無邊衆寶莊嚴。以爲供養。以無量燈蓋乃至無量衆燈莊嚴。以爲供養。以不可説莊嚴具蓋乃至不可説衆莊嚴具。以爲供養。以不可説不可説摩尼寶蓋。如是摩尼寶幢。摩尼寶幡。摩尼寶帳。摩尼寶網。摩尼寶鬘。摩尼寶光。摩尼寶焔。摩尼寶雲。摩尼寶座。摩尼寶輪。摩尼寶宮殿。摩尼寶世界。摩尼寶須彌山王。摩尼寶海。摩尼寶河。摩尼寶樹。摩尼寶衣。摩尼寶蓮華。如是等不可説不可説摩尼寶莊嚴。以爲供養。於一一境界中。各有阿僧祇欄楯。阿僧祇莊嚴。阿僧祇宮殿。阿僧祇樓閣。阿僧祇偏樓閣。阿僧祇半月莊嚴。阿僧祇内小幃帳。阿僧祇窓?。阿僧祇清淨寶。阿僧祇一切寶莊嚴。清淨一切世界悉無有餘。如是莊嚴。]
 菩薩は、さえられることのない真理のともしびを得て衆生をおしえ、みちびき、すべての善を衆生に回向して、生死の世界を超えさせる[令一切衆生。超出生死。成就如來十種力地。於諸法中得無礙法明。教化衆生一切善根迴向。調伏衆生無量心。充滿虚空法界等一切佛刹法無所至。出生三世無量善根。]。
 菩薩は、一切の衆生をして、ことごとく、無量の諸仏をみたてまつらしめ、もろもろのなかに安住せしめ、すべてのことがらに執著せず、はかり知れないすべての世界に入らしめ、また、善の力を回向して、すべての如来の神通力のなかに入らしめ、かくして無上のさとりを完成せしめる[=令一切衆生悉得睹見無量諸佛。安住一切諸善根中。成就大乘不著諸法。具足諸善根。究竟無量行。普入無量無邊一切法界善根迴向。入一切如來自在神力。令一切衆生。因此善根得薩婆若成無上道。]。
[譬如無我不離諸法。我諸善根亦復如是。攝取一切佛。恭敬供養故。攝取一切法。離障礙故。攝取一切菩薩。究竟一切同善根故。攝取菩薩一切行。滿諸願故。攝取菩薩一切法明。決定無礙故。攝取一切佛自在神力。成就無量諸善根故。攝取一切佛力無所畏。發無量心滿一切故。攝取一切善薩三昧辯才陀羅尼門。解了世間無二法故。攝取一切佛巧妙方便。示現如來大神力故。 攝取三世一切諸佛出生得道轉淨法輪示現涅槃。興發供養化衆生故。攝取一切世界。無上佛刹莊嚴故。攝取一切劫。不斷一切菩薩行故。攝取一切趣。示現受生故。攝取一切衆生。具足普賢菩薩行故。攝取一切衆生。淨煩惱習故。攝取一切衆生諸根。化度無量故。攝取一切衆生諸欲。淨諸煩惱故。攝取一切衆生。調伏成熟隨其所應爲現身故。攝取一切衆生。令解衆生如變化故。攝取一切如來性。守護受持一切佛法故。菩薩摩訶薩。如是善根迴向。了無所有。業中不取虚妄報。報中不取虚妄業。離諸虚妄入深法界。心常安住勝妙善根。遠離散心修習善法。不信不入一切諸法。不見有法自性成就。作者壞者皆不可得。知一切法悉無自在。解了法界無有見者無有知者。如是菩薩摩訶薩。圓滿具足解了諸法。得一切法衆因縁地。見一切法身。離欲實際等觀諸法。解了世間猶如變化。明達衆生皆是一法分別無二。不捨諸業境界方便。於有爲界出無爲界。而亦不壞有爲之性。於無爲界出有爲界。而亦不壞無爲之性。如是菩薩摩訶薩。樂觀諸法寂滅之相。出生一切清淨善根。皆悉迴向救護衆生。精勤修習離愚癡法。深達明了一切法海。以虚空等一切善根迴向。具足無上堅固功徳。得離癡冥明淨法眼。善知方便迴向功徳。]

 菩薩は、このように、善を回向し、一切の衆生をして一切のくにをきよめさせ、仏の自由自在の力を得て、衆生をおしえ、みちびき、みずから、一切世間の、最上の福田注1となり、衆生のために、仏法のたからを掘り出すみちびき手となる。
 菩薩は、一切の世間のために、きよらかなともしびを点じ、菩薩の一々の善は、法界にみちあふれて、衆生をまもり、一切の衆生をして、ことごとく、清浄の功徳を完成せしめる。
[「菩薩摩訶薩。如是善根迴向。守護受持諸如來性。教化成熟諸衆生性。嚴淨一切諸佛刹性。不壞業性。分別法性。等觀不二性。遍遊十方性。廣説離欲性。具足解脱性。普照諸根性。」が略。]
 仏子よ、これが『一切の場所に至る回向』である。
[「菩薩摩訶薩。安住此迴向。能以一切善根迴向。得至一切處身業。善能應現一切世界故。得至一切處口業。微妙音聲充滿十方一切世界故。得至一切處意業。悉能受持一切諸佛所説法故。得至一切處神足。善能隨順一切世間行故。得至一切處法。隨順一切法故。得至一切處隨順法陀羅尼辯才。令一切衆生悉歡喜故。得至一切處順入法界。於一毛道悉能普入一切世界故。得至一切處身。令一切衆生身入一衆生身故。得至一切處劫。於一切劫中常見諸佛故。得至一切處刹那。於一刹那現一切佛興於世故。佛子。菩薩摩訶薩。得至一切處善根迴向。能以一切善根迴向。爾時金剛幢菩薩。承佛神力普觀十方。以偈頌曰
一切内外諸世間 菩薩大士無所著
不捨饒益衆生事 如是妙智人中勝
不著一切諸世界 不取十方堅固性
不取衆生壽命相 亦不妄取諸世間
一切十方世界中 攝取衆生悉無餘
觀察有無得自在 至一切處善迴向
攝取有爲無爲法 心不妄取諸世間
世間諸法無差別 照世燈明如是覺
一切所行諸業行 上中下品各不同
智者諸業悉迴向 一切十方諸如來
菩薩迴向到彼岸 隨如來學悉成就
分別甚深微妙智 具足最勝殊特法
清淨善根悉迴向 常能利益諸群生
悉令十方一切衆 成就無上照世燈
未曾虚妄取衆生 亦不妄想念諸法
不染不著一切世 亦復不捨諸衆生
菩薩常樂寂滅法 隨順得至寂滅境
亦不捨離衆生道 得如是等微妙智
不起諸業虚妄想 於諸果報亦不著
一切世間從縁起 不離因縁見諸法
如是境界隨順至 遠離一切虚妄想
一切衆生調御師 具足明了善迴向」が略。]

D 【無盡功徳藏迴向
 仏子よ、第五に、『尽きることのない功徳の蔵の回向』とは、なにか。
 この菩薩は、もろもろの善をまなんで、すべての宿業のさわりをはなれていく。
 菩薩は、過去、未来、現在の、諸仏の一切の善、および三世一切の衆生の善において、ことごとく、よろこびをわかつ。
 もろもろの如来を、うやまい、とうとび、礼拝し、供養して生ずるところの善[において諸仏を勧請して生ずるところの善]。諸仏の説法を、ききとり、記憶しそのとおりに修行して、不思議の境界に入るところの善。三世諸仏の尽きることのない善。すべての菩薩が、修行するところの善。三世の諸仏が、さとりを完成するときの無上の善。菩薩は、このような一切の善において、ことごとく、よろこびをわかつ。
[「隨喜已。安住彼善根。三世諸佛轉淨法輪。度無量衆生。彼諸衆生所得善根。菩薩摩訶薩。皆悉隨喜。」が略]
 三世の諸仏が、はじめて、さとりへの志しをおこして、菩薩のもろもろの行を実践し、ついに仏となって、涅槃を実現するにいたるまで、そのあいだに得るところの善において、菩薩は、ことごとくよろこびをわかつ。
[「彼諸如來般涅槃已。受持守護諸佛正法。乃至法滅所修善根。念佛境界所修善根。自己境界所修善根。乃至無上菩提境界善根。」が略]
 菩薩は、このような、すべての善を、ことごとく、回向する。
[「菩薩摩訶薩。作如是念。此諸善根。若修。若學。若積集。若開解。若隨喜。若具足。若成就。若有所行。若有所得。若正憶念。若受持。若堅固難壞。如此善根。盡過去際劫一切諸佛莊嚴世界。無量行業之所興起。佛智所知菩薩所識。應衆生起隨欲清淨。如來所持。如來出世淨業所成。普賢菩薩淨業所起。彼諸世界。若有衆生成無上道。現自在力。未來一切如來應供等正覺莊嚴佛刹與法界等。無量無邊虚空法界等。一切世界中盡未來際劫。一切諸佛。彼諸如來成就智慧。當淨佛刹。雜寶莊嚴一切無厭。上香莊嚴。雨一切華莊嚴。一切衣雲莊嚴。一切功徳藏莊嚴。一切如來持智莊嚴。一切佛刹莊嚴。不可説莊嚴。修習不可思議功徳莊嚴。如來等正覺淨威神莊嚴。未來一切諸佛莊嚴佛刹。一切世間所不能睹。菩薩淨眼之所照見。菩薩摩訶薩。修勝善根。悉入一切諸清淨法。受持一切諸清淨法。猶如變化。普行菩薩諸清淨業。入菩薩不可思議自在三昧。佛慧光明普照世間。如未來諸佛嚴淨佛刹。現在諸佛嚴淨世界亦復如是。種種莊嚴清淨具足功徳普覆。無量妙色不可思議香。無量雜寶。無量寶樹。阿僧祇莊嚴。阿僧祇宮殿。阿僧祇微妙音聲。隨善知識顯現無量。一切功徳殊勝莊嚴不可窮盡。一切香莊嚴。一切鬘莊嚴。一切華莊嚴。一切末香莊嚴。一切寶莊嚴。一切衣莊嚴。一切幢莊嚴。一切幡莊嚴。一切?綵莊嚴。一切寶欄楯莊嚴。阿僧祇白寶網普覆莊嚴。阿僧祇河莊嚴。阿僧祇雲雨莊嚴。阿僧祇自然妙音無所不聞。以如是等無量無邊諸莊嚴具。莊嚴無量無邊不可思議諸佛世界。彼諸世界中。若佛刹莊嚴。佛刹清淨。佛刹平等。佛刹妙善。佛刹功徳。佛刹殊勝。佛刹安樂。佛刹不壞。佛刹無盡。佛刹無量功徳不可盡。佛刹不退。佛刹無所畏。佛刹光明。佛刹快樂。佛刹無厭。佛刹普照。佛刹照明。佛刹方正。佛刹第一。佛刹勝佛刹最勝。佛刹微妙。佛刹無比。佛刹無等。佛刹上。佛刹無上。佛刹無等等。如是等三世一切諸佛佛刹莊嚴。菩薩摩訶薩。以此善根皆悉迴向。普令一切佛刹清淨莊嚴。如是莊嚴於一世界中。三世一切莊嚴佛刹具足。清淨周遍。清淨積聚。等起莊嚴具足。莊嚴住持皆悉具足。如一世界中。無量無邊虚空法界等世界。悉以三世諸佛莊嚴佛刹而莊嚴之。佛刹功徳。佛刹觀無厭足。佛刹無量。佛刹彌廣。佛刹無數。佛刹不可思議。佛刹無勝。佛刹不可稱。佛刹無邊。皆悉具足。菩薩摩訶薩。復如是迴向。令其所修一切佛刹。菩薩摩訶薩皆悉充滿。」が略]

 菩薩は、すべての清浄な功徳をそなえ、智慧を完成し、すべての衆生の世界を認識し、愚痴をはなれて、寂滅注2の世界に入り、仏を信じ、不思議の法を念じ、清浄の僧を念ずる。
 菩薩の得たところの法は、円満に成就し、その智慧のひかりは、あまねくてらしている。
[「深智無礙。從無所有寂滅法生。出生無量清淨佛法。成就殊特勝妙善根。清淨善根。最勝善根。増上善根。建立無上菩提之心。善能隨順入如來力。心常志求一切種智。淨諸魔業。了衆生性知法空寂。捨離顛倒除滅愚癡。修諸善根滿足大願。成就如是等無量無邊功徳。菩薩充滿其刹。悉從無量法門中生。安住如是一切功徳。成就無等等勝妙善根。常作佛事。善巧方便得菩提光明。具足無癡法界智慧。一身充滿一切法界。現自在力。成就大智一切智境界。善巧方便出生智慧。分別無量法界。遍遊諸刹而無所著。」が略]

 そのこころは、きよきこと、あたかも虚空のごとく、一切の法界を、ことごとく、認識している。
 菩薩は、もろもろの、不可思議な三昧に自由自在に、出入し、一切の智慧におもむき諸仏のくにに安住し、よく諸仏の神通力をわきまえ、すこしもおそれるところがない。
[「隨順三世諸佛善根。普照一切如來法界。悉能受持一切諸佛所説正法。善能演出不可思議清淨音聲。善能分別阿僧祇諸語言法。得無上道佛自在地。悉能周遍一切世界而無障礙。悉攝一切無諍之法。心無虚妄無所染著。修習増廣菩提之心。善解智慧。隨時應化權變無方。了眞實義具足演説。成就如是等無量功徳。諸大菩薩。莊嚴世界。充滿世界。種種莊嚴。順至安住。善修熏修。淳淨無雜。周遍清淨?然宴寂。於一佛刹少分處。所有無量菩薩。無數菩薩。不思議菩薩。不可稱菩薩。不可量菩薩。無等菩薩。不可究竟菩薩。無分齊菩薩。不可説菩薩。不可説不可説菩薩。如一佛刹一一少分處有如是等大菩薩摩訶薩。虚空法界等一切世界。菩薩摩訶薩皆悉充滿亦復如是。」が略]

 菩薩は、一切の諸仏、一切の菩薩、一切の無上のさとり、一切の大きな願い、一切の衆生、一切の世界に、回向し、つねに、如来を見たてまつり、法界とひとしくなろうとおもう[=菩薩摩訶薩。以諸善根方便迴向。迴向一切佛刹。一切菩薩摩訶薩。一切如來。一切無上菩提。一切大願。一切出要。一切衆生淨。一切世界常見如來。如來壽命無量。轉不退轉法輪與法界等。]
 このように、菩薩は、もろもろの善を回向して、すべての仏のくにをきよめ、すべての衆生の海[漢訳では界]をきよめ、すべての諸仏をして、法界に充満せしめ、また、如来の清浄の法身をして、すべての仏のくにに充満せしめる。
 菩薩は、このような比類のない[=等無等等]回向をもって、一切の智慧におもむき、そのこころきよきこと、虚空のごとく、動じないこと、大地のごとく、もろもろの[漢訳ではこれがない]、不可思議の回向に入る。
[「樂觀一切業報皆悉寂滅。無盡功徳迴向。平等隨順一切法界。菩薩摩訶薩。行如是迴向已。不虚妄取我及我所。不虚妄取佛及諸佛法。不虚妄取佛刹及刹清淨。不虚妄取衆生及調伏衆生。不虚妄取諸業及取業報。不著意業及業果報。不壞因果。不取有法不壞有法。生死非雜亂。涅槃非寂靜。如來境界道非他所作無法同止。菩薩摩訶薩。如是起諸善根決定迴向。成熟具足等觀取相。善取境界分別稱量。離諸虚妄而無所著。」が略]

 菩薩は、このように、もろもろの善を回向しおわって尽きることのない善の力を得る。
 つねに、三世一切の諸仏を念じて、尽きることのない善の力を得、[「度無量菩薩得無盡善根。」が略]諸仏のくにをきよめ、尽きることのない善の力を得、衆生の世界をきよめて、尽きることのない善の力を得、甚深の法界に入って、尽きることのない善の力を得、量り知れない心を、まなび、きよめて、尽きることのない善の力を得、一切の諸仏の境界を了知して、尽きることのない善の力を得る。
[「修習一切菩薩淨業得無盡善根。了達三世得無盡善根。以如是等善根迴向。悉能度脱一切衆生。入衆生界不見衆生迴向。解一切法無有壽命迴向。知一切法眞實無有自在迴向。一切諸法無福伽羅迴向。觀察一切諸法離諸忿諍迴向。一切諸法從因縁起無有堅固迴向。知一切法眞實無所著迴向。一切佛刹無所染著迴向。不取菩薩行堅固相迴向。分別了知一切境界空無所有迴向。菩薩摩訶薩。如是迴向。眼終不見不淨佛刹。亦復不見異相衆生行法不見法入智無所入。解了一切猶如虚空。於如來身得一切法。滿足成就無量諸功徳力。具足至一切處善根安樂衆生。此菩薩摩訶薩於念念中。得不可説不可説十力地。具一切種清淨善根。悉能攝取一切衆生。彼菩薩摩訶薩。成就如意功徳寶藏。隨所遊方悉能嚴淨一切佛刹。令不可説不可説衆生安住攝取諸功徳力。」が略]

 菩薩が、このように回向するとき、回向の威力によって、菩薩の行為は、すぐれて、比類なく一切の世間も、これを破壊することができず、もろもろの悪魔を克服し、退くことのない功徳の力を完成し、量り知れない、大きな願いは、ことごとく満足する。
 菩薩のこころは、いよいよひろくして、一切の智慧にひとしく、一念のなかにおいて、ことごとく、無量の仏国に、いきわたり、無量の智慧の力を得て、ことごとく、諸仏の境界を了知し、つねに、一切の仏法をたもって、量り知れない大智に安住している。
[「菩薩初發菩提心力。悉與虚空諸法界等。」が略]
 これが、『尽きることのない功徳の蔵の回向』である。
[「菩薩摩訶薩。安住此無盡功徳藏迴向。復得十種無盡功徳之藏。何等爲十。@ 一者【常見諸佛無盡功徳之藏】。於一一毛孔中見無量阿僧祇諸佛。A 二者【入無盡法功徳之藏】。以如來智慧。等觀一切法即是一法。B 三者【受持正念無盡功徳之藏】。聞一切佛所説正法聞持不忘。C 四者【得無盡慧功徳之藏】。於一切如來所説經法。善能次第解其句義。D 五者【無盡趣法功徳之藏】。善能分別一切法趣。E 六者【無盡佛願功徳之藏】。智慧如空。充滿三世一切諸法。F 七者【無盡功徳功徳之藏】。充滿一切諸衆生意猶不可盡 G 八者【無盡智功徳之藏】。一切衆生愚癡?障悉能除滅。H 九者【無盡辯才功徳之藏】。令一切衆生悉解一切佛法平等無二。I 十者【無盡十力四無所畏功徳之藏】。具足修習菩薩所行。受法王職得一切智。
佛子。是名菩薩摩訶薩得十無盡功徳之藏。以此無盡功徳之藏。皆悉迴向一切功徳。爾時金剛幢菩薩。
普觀十方以偈頌曰
菩薩成就直心力 於一切法得自在
隨喜所獲諸功徳 無礙方便善迴向
三世一切諸最勝 嚴淨刹土及世間
具足一切勝功徳 迴向淨刹亦如是
三世一切最勝法 菩薩悉能諦分別
淨心攝取一切法 如是莊嚴諸佛刹
窮盡三世無量劫 讚一佛刹諸功徳
三世諸劫猶可盡 佛刹功徳無窮極
如是一切諸佛刹 一切最勝悉嚴淨
菩薩嚴淨一切刹 與諸導師等無異
彼眞佛子心清淨 悉從如來法化生
一切功徳莊嚴心 充滿一切諸佛刹
彼諸菩薩悉具足 無量相好莊嚴身
一切諸辯悉成滿 不可窮盡如大海
觀察境界心平等 安住一切三昧門
成就清淨無等心 光明普照十方界
如是無餘諸佛刹 此諸菩薩悉充滿
未曾想念聲聞乘 亦復不求縁覺道
菩薩如是心清淨 善根迴向諸群生
普令衆生成正覺 具足三世諸佛法
十方一切諸魔王 菩薩威徳悉調伏
勇猛安住莫能壞 決定修行究竟法
菩薩具足諸願力 迴向功徳無障礙
深入無盡功徳藏 三世果報無窮盡
善能觀察一切法 了達其性不自在
已能分別空無我 是故不妄取業報
無有色法及無色 亦無有想無無想
亦無有法及無法 一切諸法無所有
亦復非有亦非無 亦復非因非無因
於彼一切諸縁中 其心了達無染惑
一切衆生語言法 悉能了知無所著
悉知世間施設法 決定諸法無有我
平等觀察衆生類 諦了諸法無二相
普觀三世無差別 佛刹諸業亦如是
菩薩如是知迴向 隨所行業功徳生
明達諸佛眞實性 解一切佛深妙法
菩薩如是淨迴向 心能分別善思量
了知自性悉非性 於一切法無所著
攝取一切諸境界 迴向一切群生類
除滅一切愚癡闇 於眞實性覺如如
菩薩一切虚妄見 已滅已棄永無餘
遠離世間煩惱熱 得到究竟清涼趣
不壞一切諸法性 明達眞實無所生
解了諸法猶如響 悉於一切無所著
了知三世衆生類 悉從因縁和合起
善解煩惱諸習氣 不壞諸法眞實性
了達業性非是業 亦復不壞諸業性
又亦不壞業果報 宣揚讚歎縁起法
衆生所生無有生 亦無流轉生死中
不著衆生説衆生 善能隨順諸世間」が略]



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初版:2003年5月20日