掲示板の歴史 その十四
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NO.342  密教化現象
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2005/01/07(Fri) 17:15:45
□IP/ 4.27.3.43


私はてっきりヘシュカズムというのはギリシャ正教の一派なのかと思ってましたが、実は行法のことだったんですか(間違ってたらごめんなさい)
なるほど、記事[No.339]での引用からしても、[No.341]の「祈りの言葉を何度も唱えて瞑想する」ということからしても、たしかに真言によく似ているのかも知れませんね。神の名を連祷して精神を自己の内奥に集中することで到る「ヘーシュキアの境地」が、スーフィズムで「ズィクル(アッラーの連唱)」によって得られるとする「ファナー(自我消滅の境地)」と同じく「神との合一」「自己の神化」と等価の行為として認識されているらしいことも、仏教密教で三密(真言密教では特に口密)を修することで三昧において本尊と同一化するというのととても類似していると思います。

以下は朝日新聞社『宗教学がわかる。』所収、田島照久早稲田大学商学部教授による「神秘主義」という記事からの抜粋です。
  • 神秘主義と呼ばれている宗教現象は、多くは個人に由来するため、その形態も質も多種多様であり、リジッドは定義を下すことははばかられるが、神と人間の魂が一つとなる体験、「神秘的合一(ウニオ・ミュスティカ)」を基礎とした宗教性という範囲で神秘主義を理解しておくことは許されるであろう。(三四)
  • 神秘主義とは、直接的体験を基礎とした、信仰の純化された形態であるといってよいであろう。(三五)
  • 神秘的合一を核とした救済メッセージは、仏教では特に密教の三密行における感応道交による入我我入の教えや、梵我一如を説く、古代インドのウパニシャッド哲学、シャンカラの教説、プロティノスの哲学、偽書によってキリスト教世界に決定的な影響を与えた偽ディオニシウス・アレオパギタの思想、あるいはユダヤ教では、カバラやハシディズム、イスラム教のスーフィズムなどに、多くの相違点を含みつつも確認することができる。(三五)
上の引用を踏まえて「密教」を「神秘主義」と同義として捉えると、「密教化」という自然現象は、人間現象に含まれる宗教現象の一部として割と普遍的で必然的なものであって、あらゆる宗教はもしかすると多かれ少なかれ密教化する資質を秘めているのかも知れない。
もちろん、密教だからといって善いとも悪いとも限らないとは思いますが(^_^)

ところで金岡秀友氏は(その密教研究の副次的著作にすぎないとする)『日本の神秘思想』という著書で、「もし神秘思想、神秘主義の最大公約数を神人合一と考えれば、成仏を最終目的とする仏教はそれ自体が基本的に神秘主義の範疇に入る」(一一〜二)という意味の内容を述べており、もしこれが正しい見解で「神秘主義=密教」とするならば、仏教は成仏を目的に据えた時点ですでにある程度密教であったということになります。
仏教系密教 =もともと「なれる」といっていた教えから「早めになれる」に進化した。
一神教系密教 =そもそも「なれるわけがない」という状態から「なれる」に突然変異した。
これら両者の方法論が似通っているというのは、確かに注目に値すると思います。