掲示板の歴史 その十二
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NO.318  五停心観
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2004/12/19(Sun) 21:26:58
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以下は『岩波仏教辞典』による五停心観の定義。
五停心観 ごじょうしんかん
小乗アビダルマ(阿毘達磨、あびだつま)の三賢の第1位。声聞の入門的な仏道修行である。邪心を停止する5種類の観法。

@ 不浄観 肉体や外界の不浄なありさまを観じ、貪りの心を止める。
A 慈悲観 一切衆生を観じて慈悲の心を生じ、怒りの心を止める。
B 因縁観 諸事象が因縁によって生ずるという道理を観じ、愚かな心を止める。
C 界分別観 五蘊・十八界などを観じ、物に実体があるという見解を止める。
D 数息観 呼吸の回数を数えて、乱れた心を止める。

界分別観のかわりに念仏観(仏随念、仏徳を繰り返し億念して禅定三昧の中に観仏すること)をおいて、「五種観門」ともいう。
同様に、『仏教学辞典』より二項目引用。
ごじょうしん‐かん 五停心観
五度観門、五門禅、五観、五念ともいう。仏道修行の最初の位において、五種の過失を止めるために修める五種の観法。
即ち

@ 不浄観 自他の肉体の不浄な有様を観察して、貪欲を止める。
A 慈悲観 一切衆生に対して慈悲の心を起こして瞋恚を止める。
B 因縁観 縁起観ともいう。諸法因縁生の理を観察して愚癡を止める。
C 界分別観 界差別観、界方便観、分析観(ぶんしゃくかん)ともいう。十八界の諸法はすべて地・水・火・風・空・識の和合に外ならないと観察して我見を止める。
D 数息観 呼吸を数えて散乱した心を整える。

である。
時には界分別観を省いて念仏観(仏を念じて種々の煩悩を止める)を加える。このような五停心観を修める位を五停心位(ごじょうしんい)といい、小乗ではこの位から別相念住位を経て総相念住位に至るまでの三位を総称して三賢(さんげん)という。

さんげん‐い 三賢位
修行の階位。

[1] 小乗の三賢。
涅槃の証果(解脱)をもたらす(順ずる)はたらきのある有漏の善根(順解脱分)を修める段階で、外凡位(げぼんい)ともいう。即ち五停心(観)位・別相念住位(別相念処位)・総相念住位(総相念処位)の三である。四善根位(内凡位)とあわせて七方便位といい、見道に入るための準備的な修行の階位にあたる。
@ 五停心(観)位
五停心観によって貪・瞋・癡・我見・散乱心の五種の心をおさえる位。
A 別相念住位
身・受・心・法を個別的に順次に不浄・苦・非常・非我であると、その自相(独自なすがた)を観じ、またそのいずれもが非常・苦・空・非我であると、その共相(ぐうそう、共通なすがた)を観じて四念住を修める位。
B 総相念住位
四念住の全体がただちに非常・苦・空・非我であると総括して、その共相を観ずる位である。
このうち五停心位で奢摩他(しゃまた、心をしずめること。止)を成就し、次の二位で毘鉢舎那(びばしゃな、観)を成就する。

[2] 大乗の三賢。
十地以前の菩薩の階位に三階三十心の別があること。また三十心ともいう。普通には瓔珞本業経などに基づいて十住・十行・十廻向の三階位をこれに当て、十信を外凡位とするのに対して内凡位ともいう。