掲示板の歴史 その八
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NO.226  陀羅尼
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2004/04/28(Wed) 16:00:44
□URL/ 仏教用語辞典

鳩摩羅什訳『摩訶般若経』(『大品般若経』)「堅固品第五十六」より
また次に、須菩提、阿惟越致(不退転)菩薩、仏の説法を聞いて疑わず、悔やまず。聞き巳って受持して終に忘失せず。何を以ての故に。陀羅尼を得たるが故に
須菩提曰く、世尊、何等の陀羅尼を得て仏所説の諸経を聞くも忘失せず。
仏、須菩提に告ぐ、菩薩、聞持等の陀羅尼を得るが故に、仏説の諸経を忘れず、失わず、疑わず、悔まず。
第一下線部からしても、上記第二下線を施した箇所が、サンスクリットでは「憶持するものである陀羅尼を得ている者にとって」(dhaaranadhaaraniipratilabdhasya)とあることからも、陀羅尼の原義が経文を受持し、記憶する能力を指すことを意味していることが判る。経典は暗誦によって伝承されてきたため、記憶力は大乗菩薩の必須条件の一つだったといえる。
『大品般若経』系には「聞持陀羅尼」が頻出し、それが大乗仏教の重要項目である三昧や無生法忍と密接に関連しているのに対して、『小品般若経』系では「般若波羅蜜」そのもの、そしてその「功徳」「威力」を受持することに大きな関心を抱いている。

隋の僧就によって編集された『大方等大集経』六十巻に収録されている曇無纖訳「陀羅尼自在王品第二」の冒頭には、次のようにある。
善男子、菩薩に四の瓔珞荘厳(大乗の菩薩が身につけなければならないものを装身具に譬えた言い回し)あり。一には戒瓔珞荘厳、二には三昧瓔珞荘厳、三には智慧瓔珞荘厳、四には陀羅尼瓔珞荘厳なり。
このように、同経典は戒・定・慧の三学に、陀羅尼、つまり「仏の教えを読み込み理解し記憶し続ける能力」を加えて、菩薩における四種の必須条件としている。
(「大正/八」三四三下、「東大写本/No.234」308a7-308b1、小峰弥彦「般若経における菩薩と陀羅尼」三一〜二、「大正/八」五四一下〜五四二上、頼富本宏「陀羅尼の展開と機能」参照)