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NO.350 『宝性論』
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2005/01/11(Tue) 20:08:16
□IP/ 4.27.3.43
『宝性論』
柏木氏「如来蔵思想」より(一四九〜)。
- 漢訳『究竟一乗宝性論』四巻、大正三一、No.一六一一
- skt. ratnagotravibhAga-mahAyan^ottaratantra-SAstra, ed. by E. H. Johnston, Patna, 1950
- Tib. TTP. vol. 108, pp. 24-56
- インド仏教における如来蔵・仏性に関する学説に焦点を当て、それらを組織的に集成論述した代表的な文献の一つ。
- 「宝性 ratnagotra」とは、仏・法・僧の三宝を出生する因という意味で、如来蔵のことである。
- おそらく五世紀の初めごろ、瑜伽行派唯識説の影響下において、『大乗荘厳経論』(mahAyAnasUtrAlaMkAra)などと密接な関係をもちながら成立した。
- 著者は不確定。
- 五一一年に勒那摩提(Ratnamati)によって漢訳され、南北朝末から唐初の仏教学、特に摂論宗の学系において用いられた形跡があるが、同論書の如来蔵・仏性説が中国・日本仏教の教理学の表面に登場することはなかった。
その理由は
@ 漢訳文がそのままでは難解だったこと
A 同系でしかも世親著とされる『仏性論』が真諦(ParamArtha 499-569)によって紹介され、『大乗涅槃経』伝訳以来の中国仏教界における一切衆生悉有仏性をめぐる教学上の関心に明快に応えたこと
B 唯識におけるアーラヤ識説と如来蔵説との折衷を試みた『大乗起信論』の盛行
- 自説の証明のために使用された先行経論からの引用関係があきらかであり、そのすぐれた組織性は如来蔵・仏性説の一つの流れの幅とその行方を把握させてくれる点が大きい。
- 引用された経論
『如来蔵経』『不増不減経』『勝鬘経』『華厳経性起品』『法華経』『維摩経』『大集経』系の諸経典、『大乗涅槃経』など多数に及ぶが、なかでも如来蔵説の基本的な典拠として引用され尊重されているのが『如来蔵経』『不増不減経』『勝鬘経』の三部作である。