掲示板の歴史 その八
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NO.242  『声字実相義』
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2004/06/17(Thu) 18:43:40


空海は『声字実相義』において次のような主張をしている。
  • 悟りの根本は、すぐれた教えによらなければ示し得ない。すぐれた教えが興るのは、音声文字によらなければ成り立たない。音声と文字とが明らかであって初めて実相(真実の相)は顕わにすることができる。
  • 「声字実相」は「声」「字」「実相」と分けられる。「声」は響き、「字」は声に意味を与えるものであり、「実相」とはこの「字」がかならずその対象の実体に対応することをいう。
  • 「声字実相」という句は様々に解釈されることができる。たとえば、「声字が実相に及ばない」という解釈もあるがこれは淺略釈(浅はかな読み方)であり、「声すなわち字」「声字すなわち実相」とする同格限定複合語としての解釈、および「声、字、実相はきわめて近しく関わり合っているため離れることがない」という隣近釈としての解釈は深秘釈(深い「密意」の解釈)である。
空海はまた、自作の詩を提示して解釈を進める。
以下はその詩である。(松本照敬氏の訳による)

五大皆有響(五大に皆響きあり)[五種の構成要素にはみな響きがある]
十界具言語(十界に言語を具す)[十種の世界には言語がそなわっている]
六塵悉文字(六塵悉く文字なり)[六種の対象はすべて文字である]
法身是実相(法身是れ実相なり)[真理の体現者はあるがままのすがたである]

この四行それぞれに解釈を付けているわけだが、空海によると第一句は「声の本質」を究め、第二句は「真実虚妄の文字」を究め、第三句は「内外の文字」を表示し、第四句は「実相」を究めているとしている。