仏教用語辞典


酔象 [すいぞう]
『今昔物語/巻一の第十』「提婆達多、仏ト諍ヒ奉レルコト」に、デーヴァダッタのブッダに対する叛逆についての逸話が語られているが、『今昔物語』の撰者は「酔象」という語を文字から判断して「大象ニ酒ヲ呑マシメテ吉ク酔ハシテ」と潤色している。しかし、「酔象」とは「酒に酔った象」ではなく、「発情期の象」を意味するガジャ・マダを翻訳した言葉である。これは、マダという語がもともと「酒に酔うこと」、「狂気」「熱気」「情欲」などを意味することによる。また、ガジャ・マダは「香象」とも訳されるが、これは発情期の象がこめかみの部分から芳香性の粘液(マダ)を分泌するためである。
(筑摩書房・岩本裕『仏教説話』参照)
二〇〇四年五月十日入力)

⇒ 提婆達多

鈴木大拙 [すずきだいせつ]
胡適に代表される近代研究の「禅宗偽史の解明」に対して、鈴木大拙(一八七〇〜一九六六)は偽の歴史が生じるにはそれを生じさせるだけの理由、つまり時代的、思想的、宗教的な背景と需要と必要性があったのだから、宗教的文献としての禅文献のより本質的性格を明らかにする必要がある、と主張した。

⇒ 胡適