仏教用語辞典
け
戯論 [けろん]
- 「prapanca」の漢訳。
「prapanca」は仏典では一般に「形而上学的議論」を意味する。
しかしチベット訳ではこれを「spros pa(ひろがり)」と訳している。
また、インド哲学一般では「世界のひろがり」の意味に解釈されている。
ナーガールジュナによると、涅槃(ニルヴァーナ、nirvaana)は一切の戯論と分別と対立とを超越しているという。
もしそれが正しければ、涅槃を説明するためには否定的言辞によるしかないことになる。
(二〇〇四年五月十日入力)
⇒ 涅槃
剣 [けん]
- サンスクリット語は「Khadgah」。
その形状は往々にして三鈷柄の剣として造られ、描かれる。 [『ギャラリー』「仏教美術」参照]
仏教において、剣は利剣と宝剣(法剣)とに区別される。
利剣は先の鋭利な剣で降魔の思想を表示し、宝剣は丸みを帯びていて、自らの魔(煩悩)を倒す意味を持つ。
利剣は智門の諸尊に、宝剣は悲門の諸尊に持たれる。
刀には通常、片刃と両(双)刃とあって、日本では前者を刀、後者を剣と呼ぶのが普通だが、経軌では単純に剣、刀と説かれていて、厳密に区別されてはいない。
- 『無量寿経/巻上』
「法剣を執り」という言葉がある。
『蘇悉地羯羅経』
「刀を用いて修行を行なう時は、上質の刀で、両肘の長さ、四指の幅、紺青の艶のある鳥の羽のような形状のものを選べ。傷のついたものは不適当である。刀を扱うには小指を用いるように」とある。
『大日経/第二』「具縁品」
「不動如來所持慧刀羂索」とあるように、不動明王の利剣は慧刀とも呼ばれる。
『大日経/第三』「悉地出現品」
祈願を成就させるための品として次の七つを挙げている。
- 計都 = 彗星、あるいは彗星のように尾を引く旗
- カツガ = 剣
- 傘蓋 = インドで貴族階級に使用される傘
- 履シ(尸+徒) = 靴やわらじ
- シンタマニ = 宝珠
- 安膳那薬 = 目薬の一種
- 廬遮那 = 毘廬遮那仏(太陽神とする説もあるらしい)
『大日経疏/第十一』
材質について、 「刀はヒン(金+賓)を以て骨柄となす。 = はがね(スチール)を骨組みにしなければならない」 と言及している。
『大日経疏/第十一』
「Khadgah」を「刀」と訳す。
『慧琳音義/三十六』
「Khadgah」を「劒」と訳す。