持明院 陀羅尼

F 文殊院

煩悩に打克つ智慧の働きを象徴した戦闘的な院。
@ 文殊菩薩とその使者


文殊菩薩(妙吉祥菩薩/般若金剛/青蓮上三股金剛)
Manju-shrii  
@ 「密印品」(平河出版社『真言事典』No.1942)所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ケイケイ・クマラキャ・ビモクテイ・ハッタ・シッタイタ・サマラサマラ・ハラチネン・ソワカ
Namah samanta buddhanam he he kumaaraka vimukuti-patha-sthita smara smara pratijnam svaha.
A 「密印品」(『密教大辞典』)所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・マン・ケイケイ・クマラ・ビモキチ・ハッタ・シッタイタ・サマラサマラ・ハラチネン・ソワカ
Namah samantha buddhanam mam he he kumaara vimukti patha sthita smara smara prati-jnyam svaha.
B 『文殊儀軌供養法』「五字陀羅尼頌」所説
オン・ドギャ・シナ・ダン
Om duhkha cheda dham.
C 同上儀軌所説
オン・ア・ラ・ハ・シャ・ナウ
Om a ra pa ca na.  
上記Bは『金剛界』「三昧耶会/金剛利菩薩」参照。
上記Cは『八葉院』「文殊菩薩」参照。



普賢菩薩
Samanta-bhadrah  
@ 『普賢金剛薩タ儀軌』『五秘密軌』所説 『三昧耶印言』
サンマヤ・サトバン(Samaya satvam)
A 「密印品」所説 『支生印言』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・アン・アク
Namah samantha buddhaanaam am ah svaahaa.
B 「密印品」所説 『普賢如意珠印言』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・サマンタドギャタ・ベイラジャ・ダルマネジャタ・マカマカ・ソワカ
Namah samantha buddhaanaam samantaanugata viraja dharmanirjata mahaa mahaa svaahaa.
C 『文殊印普賢真言』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・サマンタバドラヤ・ソワカ
Namah samantha buddhaanaam samantabhadrahya svaahaa.  
『八葉院』「普賢菩薩」、『遍知院』「大安楽不空菩薩」参照。
Cは『金剛界』「賢劫十六尊」の同尊と基本的に同じだが、『賢劫十六尊軌』によると後者の場合、結句ソワカの前に種子の「アク(Ah)」を加える。


観自在菩薩
Avalokitesvara  
  
『観音院』「聖観自在菩薩」(C)参照。


対護門(二使者)
Abhimukha  
@ 「密印品」「廣大軌」「玄法軌」「青龍軌」所説
ナウマクサンマンダバザラダン・トラダリシャ・マカロシャダ・キャナヤ・サラバタタギャタ・アネン・クロ・ソワカ
Namah samantha vajraanaam dur-dharsha mahaa roshana khaadaya sarva tathaagata ajnyaa kurukri svaahaa.
A 「真言蔵品」
上記@の帰命句をナウマクサンマンダ・ボダナン(帰命諸仏)とする。  
別名を対面門、対面護門、不可越守護(Durdharsha-dvaarapaalah)、不可越守護門者などという。忿怒尊。


A 五使者と配偶神
智慧の働きを示す。東密に伝承されている「胎蔵法」の真言では「普通真言蔵品」に説く種子と「密印品」に出る真言とを混合したものを用いている。


髻設尼童子
Keshinii  
ナウマクサンマンダ・ボダナン・キリ・ケイケイ・クマリケイ・ナヤ・ジョウナン・シャマラ・ハラチネン・ソワカ
Namah samanta buddhanam kili he he kumaarike daayajnyaanam smara pratijnyam svaha.  
文殊八大童子の一。


優婆髻説尼
Upakeshinii  
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ジリ・ビンナヤ・ジョウナン・ケイ・クマリケイ・ソワカ
Namah samanta buddhanam dili bhinnayaa-jnyaanam he kumaarike svaahaa.  
文殊八大童子の一。


質多羅童子
Citraa  
@ 『摂大』『廣大』『青龍』儀軌所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ミリ・ソワカ
Namah samanta buddhanam mili svaha.
A 『玄法』所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ミリ・シッタラ・ソワカ
Namah samanta buddhanam mili citraa svaha.  
文殊八大童子の一。「密印品」には、同尊の真言に関する記述はない。

地慧童子
Vasumatii  
ナウマクサンマンダボダナン・ケイリ・ケイ・シャマラ・ジョウナ・ケイト・ソワカ
Namah samanta buddhanam hili he smara jnyana-katu svaha  
文殊八大童子の一。


請召童子(鉤召使者)
Aakarshanii  
「秘密品」所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ア・アキャラシャヤ・サトバン・クロ・アネン・クマラシャ・ソワカ
Namah samanta buddhanam a akarshaya sarvam kuru ajnyam kumaarasya svaha.  
請召は「しょうちょう」と読む。


五奉教者(使者女)
Kimkaarinii  
@ 「密印品」所説 『奉行者呪』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ア・ビシャマヤニエイ・ソワカ
Namah samanta buddhanam ah vismayaniye svaha.
A 「秘密品」所説 『不思議童子呪』
上記@に同じ。
B 『八字文殊軌』所説 『不思議慧童子呪』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ケイケイ・キンシラエイシ・ア・ビシャマヤ・ネイエイ・ソワカ
Namah samanta buddhanam hehe kincirayesi aah vismaya niya svaha.
  
不思議童子、不思議慧童子(Acintyamatih)と同体。


B 万徳を荘厳する五尊
解説(未入力)


光網菩薩
Jaaliniiprabhah  
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ザン・ケイケイ・クマラ・マヤ・ギャタ・ソババムバ・シッチタ・ソワカ
Namah samanta buddhanam he he kumaara-maaya-gata svabhaava sthita svaha (「密印品」)  
『金剛界』の賢劫十六尊中「網明菩薩」と同体。


宝冠菩薩
Ratna-makutah  
「真言蔵品」所説 『一切諸仏真言』
ナウマクサンマンダ・ボダナン・サラバタ・ビマチ・ビキラネイ・ダルマダト・ネジャタ・サンサンカ・ソワカ
Namah samanta buddhaanam Sarvathaa vimati vikirana dharma dhaatu nirjaata sam sam ha svaahaa.  
上記真言は、その名のとおり、あらゆる如来に共通する真言。


無垢光菩薩
Vimala-prabhah  
「密印品」及び 『八字文殊軌』所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・ケイ・クマラ・ビシッタラ・ギャチ・クマラマドサンマラ・ソワカ
Namah samanta buddhanam he kumaara vicitra gati kumaramanusmara svaha.  
解説(未入力)

月光菩薩
Candraprabhah  
ナウマクサンマンダ・ボダナン・センダラハラバヤ・ソワカ
Namah samanta buddhanam candraprabhahya svaha.  
月光は「がっこう」と読む。
薬師如来の脇士として日光菩薩と共に『薬師本願経』『薬師観行儀軌』に説かれる。『大日経』には説かれないが、阿闇梨所伝曼荼羅、『玄法』『青龍』二儀軌において文殊院に列すとする。真言は金胎とも同じ。



妙音菩薩
Manju-ghoshah  
同項 「文殊菩薩」参照(↑)  
『法華経』の「妙音菩薩品」に説かれる菩薩で、密教では『胎蔵界諸説不同記』等に依拠して、同尊を文殊菩薩と同体とする。


C 瞳母ロ(口+魯)天[乾闥婆]と四侍者[四姉妹天女]
『理趣釋/下』によると、四姉妹天女は「四波羅蜜」を表すとされる。『金剛界』参照。


瞳母廬
Tumburuh  
『胎蔵七集』所説 『諸奉教者真言』
同項 「五奉教者」参照(↑)  
乾闥婆の名前。


肥惹耶
Vijayaa  
@ 『七集』所説 『諸奉教者真言』
同項 「五奉教者」参照(↑)
A 『廣大儀軌』所説
ナウマクサンマンダ・ボダナン・マカ・ガドハタ・ソワカ
Namah samanta buddhanam mahaa ganapaatha svaha.  
「Vijayaa」は大勝利を意味する。四姉妹天女の一、日天妃。『外院』東方にも配されているので参照されたい。
また、『文殊院』は上記@の真言、後者は『外院』のもの。
四波羅蜜では楽徳、「宝波羅蜜菩薩」にあたる。



惹耶
Jayaa  
@ 上記「肥惹耶」@に同じ。
A 上記「肥惹耶」Aに同じ。
B 『胎蔵図像』所説
ナウボウ・ジャヤエイ・ソワカ
Namah Jayaa-ye svaha.  
「Jayaa」は勝利を意味する。四姉妹天女の一、日天妃。『外院』東方にも配されているので参照されたい。
また、『文殊院』は上記@の真言、後者は『外院』のもの。
四波羅蜜では常徳、「金剛波羅蜜菩薩」にあたる。



阿耳多
Ajitaa  
『七集』所説 『諸奉教者真言』
同項 「五奉教者」参照(↑)  
「Ajitaa」は無勝、つまり最強、無敵を意味する。四姉妹天女の一。
四波羅蜜では浄徳を表し、「法波羅蜜菩薩」に当たる。



阿波羅耳多
Aparaajitaa  
@ 『七集』所説 『諸奉教者真言』
同項 「五奉教者」参照(↑)
A 「真言蔵品」所説
ナウマクサンマンダボダナン・アハラジテイ・ジャエンテイ・タニテイ・ソワカ
Namah samantha buddhanam aparaajite jayanti tanite svaha.  
「Aparaajitaa」は無能勝、つまり最強、無敵を意味する。四姉妹天女の一。
四波羅蜜では我徳、つまり業用自在を意味して「羯磨波羅蜜菩薩」に該当する。
上記Aに関しては『釈迦院』「無能勝妃」を参照すべし。同尊が「無能勝明王」(Aparaajitah)の妃であることが分かる。