掲示板の歴史 その二十
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NO.423  金剛蔵等に関する知識
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2006/01/29(Sun) 22:51:29
□IP/ 210.153.175.162

hito様

ご投稿ありがとうございます。
ご質問の金剛蔵菩薩・金剛蔵王菩薩の印言その他情報に関しては、法蔵館『密教大辞典』、大法輪閣『曼荼羅図典』等の内容を纏めると、次のようになります。

金剛蔵菩薩 vajra-garbhaH
  • 以下のようにいくつかの菩薩格の異名として登場する。
    『大日経/一』『摂真実経/上』『無量寿軌』 ⇒金剛薩タ
    『文殊宝蔵陀羅尼経』 ⇒文殊菩薩
    『理趣釋/下』 ⇒虚空蔵菩薩
    『略出経/三』 ⇒金剛宝菩薩、及び金剛利菩薩
    『教王教/二』 ⇒金剛宝菩薩
    『陀羅尼集経/七』 ⇒おそらく金剛薩タの化身
    『曼荼羅図典』 ⇒金剛薩タが大智の因とすれば金剛蔵は大智の果であり、金剛薩タを始めとする十六大菩薩は大智の展開を示していることから、即ち十六番目の金剛拳菩薩とも同体である

    つまり金剛蔵菩薩=金剛薩タ=文殊菩薩=虚空蔵菩薩=金剛宝菩薩=金剛利菩薩=金剛拳菩薩ということになる。
    また、頼富本宏氏によると
    「金剛界マンダラ南方の宝生如来の四親近菩薩の第一である金剛宝菩薩の顕教名は虚空蔵真言名(心呪名)は金剛宝金剛名(灌頂名)は金剛蔵である」
    という。(『大乗仏典 中国・日本編8』二四八〜九頁)
    この三つの名に関して、同氏は『「金剛頂経」入門』で次のように述べている:
    今、前方に出生し、最も重要となる金剛宝菩薩の例をあげて再整理すると、まず、全体仏である世尊・毘廬遮那仏がある三昧(瞑想)に入って、自らの心臓から「金剛宝」という心呪(根本となる真言)を出現させる。
    続いて、一切如来の加持(不思議な威力)によって、巨大な金剛宝(如意宝珠)が現れるが、それが世尊・毘廬遮那の手の上に収斂する。そして、その金剛宝より虚空蔵大菩薩が現れて、次のような感嘆の詩句を述べる。
    「奇(特)なるかな、妙なる灌頂にして無上の金剛宝なり。仏は、(執)著するところ無きも、名づけて三界の主と為すに由れり」
    次に、その虚空蔵大菩薩は、南方の宝生如来の前方(大日如来側)の小月輪に出生する。ようやく金剛界マンダラに、所定の場所を得ることになるのである。
    そして、世尊は再び三昧に入ったのち、かの虚空蔵大菩薩に、同尊の象徴(三昧耶形)となる金剛宝を授ける。すると、一切如来たちは、最後に「あなたは、金剛蔵(菩薩)である」という金剛という言葉のついた名前の灌頂を与え、ここに密教の金剛宝菩薩が新たに誕生したのである。(一〇九〜十頁)
  • 尊容
    『諸尊便覧』『浄諸悪趣経』 ⇒右は青蓮華上一独杵
    『石山七集』 ⇒右独鈷印
    『観想曼拏羅経』 ⇒身青白色にして、右手にウバラ華を執り、華の上には金剛杵あり、左手は腰の側に按んず(金剛界七集はこれにやや類似)
    「御室版現図/微細会」 ⇒左掌を膝にかぶせ、右手は宝珠をのせた蓮華を持つ
    「御室版現図/供養会」 ⇒三昧耶形(井形独鈷杵)をのせた蓮華を両手で持つ
    「東寺曼荼羅/微細・供養両会」 ⇒左拳を腰に置く
  • 三昧耶形
    『賢劫十六尊軌』 ⇒独鈷
    「三昧耶会」 ⇒蓮華の上に四つの独鈷杵を井字形に置く
    『曼荼羅図典』 ⇒井形の独鈷杵:縦を能求菩提心、横を所求菩提心とみれば因果二徳を具えていることを示しており、四本あるのは四智(大円鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智)の円満を表す
  • 種子
    va、供養会にはsa
  • 印言
    印 →外縛して中指を立てる(独鈷印)
    呪 →オン・バザラ・ギャラバヤ・ソワカ(『教王経』『観想曼荼羅経』『賢劫十六尊軌』『金剛界七集』等)
    「金剛蔵ノ印(コンゴウゾウイン)」 ⇒金剛蔵菩薩の印。『陀羅尼集経/一』に説く。内五股印の二無名指の峯(ハシ)を両虎口(大頭両指の間)に出せる印なり。経に二頭指の間相去る四寸半、二大指の中指を去ること一寸と説く。此印は愛染明王の鬼向断印なり(『陀羅尼集経/一』『諸儀軌稟承録/十』)

    以上の印言は『密教大辞典』記載のものだが『曼荼羅図典』によると少々異なる:
    印 →オン・バザラギャラバヤ・バ・ソワカ
    呪 →外五鈷印

    また、同図典によると『浄諸悪趣経』に次のように説かれているとする:
    印 →左手を以て金剛拳に作り腰側に安んず。右手また金剛拳に作り心上に安んず。また右手の中指を舒(の)べて竪立(しゅりゅう)を成す印
    呪 →オン・バザラガルベイ・ウン
金剛蔵王菩薩 aStottara-Cata-bhuja vajra-dharaH
  • 梵名自体は「百八臂持金剛」と訳す。
    『密教大辞典』 ⇒密号を秘密金剛といい、金剛拳菩薩の密号と同じである。金剛界にて金剛拳は十六大菩薩の最後果地満足の位であるゆえに、金剛部の果徳たる金剛蔵王菩薩は同尊と同体とみるべきか
    『陀羅尼集経/七』 ⇒金剛蔵菩薩自らその名をmahA vajra pANi(大金剛手王)と称していることを説くところから、金剛蔵王=金剛蔵のようである
  • 尊容
    二十二面一百八臂といわれているが現図曼荼羅では十六面で、体は青色、百八臂を具える。左の一手には万法を蔵することを象徴するという賢瓶を持ち、他の手には三鈷杵・独鈷杵・輪・鉤・戟・剣・梵筐・羂索等を持つかあるいは印契をなし、宝蓮華の上に坐す。上方雲中に二体の飛天があり、これは花供養雲海の義を表す。十六面は十六大菩薩生満足の義、百八臂は百八煩悩を断じて百八法明門を成就する義を表す。
  • 三昧耶形
    「御室版現図」 ⇒瓶口に蓮華があるもの
    『諸説不同記』『胎蔵七集』等 ⇒五鈷杵(金剛薩タの三昧耶形と同じであり、両尊が同体であるとする根拠となる)
  • 種子
    hUM(金剛部の通種子)
  • 印言
    『陀羅尼七集/七』 ⇒「金剛蔵大心法印呪」「結界印呪」「法身法印」「心法印呪」等十八印・十一呪を説くが、その中でも常に用いられるのが次の「金剛ラ(口+羅)闍一切見法印呪(『無量寿儀軌』『軍荼利儀軌』等に説かれる金剛部三昧耶の印言であり、金剛薩タの印言)」である:
    印 →右手の掌を仰向け、左手の掌の背を押して両手の背を相つけて、右手の大指をもって左小指の下に交え、左大指をもって右の小指の上に交える。金剛蔵王の悪魔を降伏する印なので「金剛蔵王降伏魔印」ともいう
    呪 →オン・バゾロウ・ドハンバヤ・ソワカ

    また『陀羅尼七集/七』に説かれる「大心法印」は以下のとおり:
    印 →内五股印を作り、頭指を中指の背によせないようにする
    呪 →ナウマクアラタンノウタラヤヤ・ナウマクシセンダバザラハタエイ・マカヤキシャシナハタエイ・オン・バザラセンダ・サラバトシタアンダキャ・カナダカ・コオウン・ハハハハ