掲示板の歴史 その九
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NO.272  名色
□投稿者/ 空殻
□投稿日/ 2004/09/17(Fri) 11:15:58


>ところで、中村元先生の佛教辞典に、十二因縁に『名色=名称と形態』とありますが、『名称と形態』とは何のことでしょうか。

同じく中村元氏監修の岩波『仏教辞典』には、名色(nAma-rUpa)については次のようにあります。
概していえば、<名>は心的・精神的なもの、<色>は物質的なもので、<名色>はそれらの集まり、あるいは複合体のことのこと。
(中略)
名色は十二支縁起(十二因縁)の第四支とされるなど、縁起の支分として立てられるが、縁起説そのものの解釈によりその意味もさまざまにとりうる。しかし古い縁起説のなかでは、識(認識)と相互依存的な関係にあるものとして、名色は対象世界を表わしている。なお、縁起説の胎生的解釈では、名色は胎児の成長過程の一段階、すなわち感覚器官の未発達な段階を指すとされる。
同辞典によると、もともとはウパニシャッド哲学で「現象世界の名称(nAman)と形態(rUpa)」イコール「概念とそれに対応する存在」という意味で用いられていたものが、仏教に取り入れらて「個人存在の精神的な面」と「物質的な面」とを表わすようになり、<名色>とはそのような心的・物的な諸要素より成る個体的存在(ほとんど五蘊に等しい)と考えられるようになったり、認識論的な観点から対象世界のすべて(六境とほぼ同等)であると見られるようになったりしたということです。